土地探しや、注文住宅を建てる時、また中古物件を購入してリノベーションをする時などに、『』という言葉を聞いたことがあるかもしれません。建築物は、地域によって建てられるものや建てるにあたっての制限があります。中には地域によって理想の家が建てられなかったり、リフォームやリノベーションの時に初めて制限があることを知って、予定とは違う打ち合わせが必要になったりする場合もあるので、地域性を確認しておくことは重要です。

そこで今回は、『』とはどのような地域なのか、また防火地域の家づくりには、他の地域とどんな違いがあるのかをご説明したいと思います。

1.防火地域の家づくりには制限がある!?

そもそも防火地域とはどのような地域を指すのでしょうか?防火地域に建てる家には、それ以外の地域に建てる場合とどんな違いがあるのか、ご説明したいと思います。

■防火地域って何?

防火地域とは、都市計画法第9条21項により、『市街地における火災の危険を防除するため定める地域』のことです。火災が起これば大惨事になりかねない地域として、特に住宅密集地や飲食店の多い商業地域における火災対策が講じられるべき地域とされています。また、火災の時に消防車や救急車などの緊急車両が通る幹線道路沿いも防火地域として指定されています。

同じく、火災の危険を防除するための地域として準防火地域があります。準防火地域は基本的に防火地域の周囲に指定され、防火地域と比較すると建築制限が緩やかなものになっています。建物が防火地域と準防火地域や、なにも指定がない地域をまたいでいる場合は、防火上の制限が厳しい地域の規制が適用されます。

■防火地域には建築制限がある!

防火地域に建てる延床面積が100㎡以下の建物は、建築基準法61条により、火災が起きても広がったり、倒壊したり、変形や損傷が置きにくいような耐火建築物にする必要があります。もしくは準耐火建築物、防火構造にする必要があります。

それぞれ、階数や延床面積に応じて規制が定められており、50㎡以下の平屋であれば防火構造、100㎡以下の2階建てであれば準耐火構造、3階以上であれば耐火構造にする必要があります。そのため、防火地域の建物は、基本的には鉄筋コンクリート造や鉄骨造などの耐火構造で建てますが、制限を満たし、耐火性能を有した構造や建材で建てるのであれば木造で建てることも可能です。

また、他の制限として窓や扉といった建築物の開口部には、防火シャッターや防火戸などの設置が必要です。

2.防火地域での家づくりで注意すべき点

防火地域は建築制限があることから、注文住宅やリノベーションなどオーダーメイドで家づくりをする際には注意が必要な部分があります。理想の家をつくるうえで、防火地域ゆえに影響がある、注意すべき点をご紹介したいと思います。

■一般的な相場と違う!?

同じ坪単価でも、防火地域では一般的な建築費よりも高くなってしまうため、相場を確認する際には、同じ防火地域の家と比較するようにしましょう。また、防火地域でも、木造にすることで、鉄筋コンクリート造などに比べるとコストを抑えることが可能ですが、規制のない地域の木造と比較すると、構造部に不燃料を使用する必要があり高くなってしまいます。防火地域で、かつ建てたい構造の家の相場と比較しなければ、コストが高く感じてしまうかもしれません。

また、ドアや窓も防火地域のものには制限があり、コストが高くなります。窓・ドア交換リフォームの際には、商品代が高くなるので、専用のドアや窓を選ぶことと、相場よりもプラスした価格を考えておく必要があります。

しかし、防火地域は、コストが高くなるものばかりはありません。防火地域では、基本的に燃えにくい材料で建てられるため、火災保険が安くなるというメリットがあります。

■見た目にも影響が!

防火地域の家づくりでは、選べる建材の制限があることから、インテリアなどの見た目にも影響する場合があることを覚えておきましょう。

例えば、防火地域の延焼ライン内に窓や玄関ドアがある場合は、防火ドアと防火窓を設置する必要があります。建材メーカーから防火地域や準防火地域でも使える玄関用の防火ドアは販売されていますが、一般的な玄関ドアの数と比べると種類が減ってしまい、好みのデザインが選べないことがあるかもしれません。理想のテイストに合った好みのドアがあるかを確認しておきましょう。

また、防火窓として一般的に採用される網入りガラスは、内部に金網が入っているガラスで、火災時に仮に熱で窓ガラスが割れても破片が飛散せず、火が燃え広がることを防いでくれます。しかし、金網が入っていることで、透明感のある窓ガラスではなくなってしまいます。庭や外の景色を楽しみたいと思っていたり、採光を最大限にとりたいと思っていたり、スッキリとシンプルな空間にしたいと思っているのに、金網入りの窓で、思った雰囲気の部屋にならないと感じることがあります。金網無しの耐熱強化ガラスを使った高断熱窓も防火ガラスとして採用することは出来ますが価格が高くなってしまいます。また、防火窓にしない場合は防火シャッターを設置することで代わりとして認められていますが、シャッターが付くことで、今度は外観に影響があります。

防火地域でも、防火窓や防火ドアの規制対象となるのは、延焼の恐れがあるとみなされた部分だけなので、シンプルに見せたい場所と規制対象になる部分が重ならないように間取りを考えたり、普通の窓と金網入りの防火窓、耐熱強化ガラスを使う防火窓など、設置場所に合わせて使い分けをしたりすることで、景色を楽しんだり、理想の空間を諦めたりすることなく、コストを抑えることも可能です。

3. まとめ

市街地における火災の危険を防除するため定められた防火地域では、建築制限があります。50㎡以下の平屋であれば防火構造、100㎡以下の2階建てであれば準耐火構造、3階以上であれば耐火構造にする必要がありますし、延焼の恐れがあるとみなされた部分の開口部には、防火窓や防火扉を設置する必要があります。防火地域に家を建てる場合やリノベーションの際には、制限がない地域と比較して建築コストが高くなったり、玄関ドアのデザインの選択肢が狭まったりすることを覚えておきましょう。また、金網入りの防火窓の設置によって空間のイメージが理想と違う場合もあるかもしれません。

防火地域を含め、地域や立地ごとの制限や注意すべき点があるので、地域性を知ったうえで家づくりを行いましょう。

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