要介護者や介護者にとって快適な生活を送るための助けとなるのが介護リフォームです。しかし、残念なことに、快適どころか、生活を不自由にするリフォームになってしまうケースも少なくありません。家族を思ってする介護リフォームを失敗しないためには、どうすれば良いのでしょうか?
1. 失敗から学ぶ成功のコツ
介護リフォームを失敗しないためには、まずどんな失敗例があるのかを知っておくことが役に立ちます。失敗例から成功のカギを学びましょう。
失敗ケース1:家のためのリフォームに合わせてしまった!
介護リフォームを依頼した際に、せっかくやるなら家の劣化も考えて間取りの変更と水回りのリフォームも一緒にした方がいいと勧められました。その方が工期も短く、費用も安くすむからお得に出来るとのことでした。しかし、間取り変更のプラン決めがなかなか進まず、設備機器を決めるのにも時間がかかってしまいました。その間、要介護者が何度も転倒してしまい、その度に介護者に負担がかかり体調を崩してしまいました。結局、家のリフォームどころか、介護リフォームも行えないまま延び延びになってしまいました。
◆失敗ケース1から学ぶ成功のコツ!
確かに、家が劣化してリフォームをするタイミングと介護リフォームのタイミングがピッタリ重なれば、工期の短縮化にもなりますし、同時に行える作業が多いことで、費用的にもお得に行えるためベストタイミングといえます。しかし、リフォーム全般で考えると効率的ですが、家のためのリフォームに合わせれば、まだ必要のないリフォームをするかもしれませんし、逆に要介護者や介護者にとって必要なリフォームの時期を逃す場合もあります。1年も先に計画している家のためのリフォームでも、それに合わせることがベストタイミングだと思って、介護リフォームを送らせすぎてしまわないように注意しましょう。介護リフォームの目的は、要介護者が生活しやすい環境作りと、介護者が介護しやすい環境作りを目指すためのものであることを意識して、必要な時には介護リフォームを最優先にして話を進めましょう。
失敗ケース2:バリアフリーにこだわりすぎた!
介護リフォームといえば、とにかくバリアフリーにすること!と思い段差を無くしスロープにしたところ、要介護者の転倒が階段の時よりも増えるようになってしまいました。そのことから、自分で歩くことに恐怖心を感じてしまい、家中にせっかく設置した手摺はほとんど使わないまま、車椅子生活になってしまいました。
◆失敗ケース2から学ぶ成功のコツ!
介護リフォームといえば、バリアフリーにすることと思っている方は少なくありません。確かに、文字通りバリアとなっている段差や壁を無くすことや、開閉が難しい開き戸を引戸に替えることは、介護リフォームのひとつとして効果的です。しかし、病気の中には前傾姿勢になってしまうことや、関節に負担がかかることから、スロープが適していない場合もあります。そのような方がスロープを歩くと転倒を招いてしまったり、階段であれば問題なく上がれていた段差をスロープでは進めなくなってしまったりすることがあります。また、今まで問題なく段差を上がっていたのに、バリアフリーにしたことで、脚の筋力が低下してしまったというケースもあります。
本当のバリアフリーリフォームは文字通り、段差を無くすことが重要なのではなく、要介護者や介護者にとってバリアとなっていることを取り除くリフォームのことです。今はバリアとなっていないこと、要介護者が出来ていることを見過ごして、バリアフリーリフォームを行ってしまうなら、そのリフォームは意味のないものとなってしまいます。まずは、要介護者の病状や身体の状態に精通するようにしましょう。また、要介護者の今の残存能力(本人がもっている運動機能や身体の可動域など)を最大限に活かして、それを奪ってしまわないリフォームプランを立てるようにして下さい。
2.専門家の知識を借りる事が成功のコツ!
介護や建物の専門家でない人にとって、介護リフォームのプランや時期を考えるのは難しいものです。その時に助けとなるのが、専門家です。介護リフォームの助けとなる専門家にはどんな人達がいるでしょうか?
■担当の医師
病状や健康状態を理解している専門家といえば医師です。介護リフォームを考えている場合には、同じ病気や障害でも症状は人それぞれなので、まずは担当医師の意見を聞きましょう。特に、進行性の場合は、ある程度先のことを聞くことで、不必要なリフォームを避けることが出来るかもしれません。
■ケアマネジャー
ケアマネジャーとは、要介護認定を受けると介護保険制度に基づいてケアマネジメントを行ってくれる人です。要介護認定を受けている人であれば、担当ケアマネジャーが普段から、健康状態を把握してくれていますし、ヘルパーさんなどから介護状況も聞いています。またプロとして、介護者が介護をしやすい方法も知っていて、介護に必要な専門的な知識を教えてくれます。ケアマネジャーに相談しておけば、実際にリフォーム工事が始まった時のデイサービスなどのケアプランなども一緒に立ててくれるので、要介護者、介護者ともにリフォーム期間中の介護の負担を軽減するのに役に立ちます。
■リフォーム会社
リフォーム会社の営業マンや設計士は、建物に精通しています。手摺の取付け位置や間取りの変更、建具の取替え、スロープの設置などに対し、細かい位置や材質、デザインなどを提案してくれます。車椅子に強い床材、掃除のしやすい建材など、具体的に聞くことができます。特にバリアフリーに特化している会社や、経験が多い会社に相談しましょう。実際的な提案や、施工例を見せてもらえるかもしれません。ケアマネジャーからリフォーム会社を紹介してもらうことも出来ますが、リフォーム会社によって費用も異なりますし、助成金の手続きなど一連の流れを請け負ってくれるところもあるので、まずは自分でリフォーム会社を探し相談してみることをおすすめします。
■福祉住環境コーディネーター
介護の面と建物の面、どちらの知識も兼ね備えているのが、福祉住環境コーディネーターです。福祉住環境コーディネーターはケアマネジャーと同様に、様々な要介護者の病状に対しての知識を持っていて、さらに介護改修の助成金を受ける際の手続きも行えます。病気や障害の専門的な知識が無ければ、今の体調だけを見て、すぐにリフォームを勧めるかもしれません。しかし、リフォームをすることで病状を悪化させる可能性もあります。リフォーム会社を選ぶ際には、福祉住環境コーディネーターが在籍している会社を選ぶことがおすすめです。
3. まとめ
介護リフォームを失敗しないためには、要介護者のことを最優先に考えてリフォームを行うことです。家のためのリフォームではなく、そこに住む人のためのリフォームであることを忘れないようにしましょう。要介護者の病状や残存能力は、それぞれ違うので、医師やケアマネジャーに意見を聞き、福祉住環境コーディネーターやリフォーム会社と共にリフォームプランを練ることが助けになります。専門家と連携をとって介護リフォームを成功に導きましょう。