快適な家にするために、高断熱・高気密の家は当たり前になっています。しかし、気密性の高い家は、外気との温度に差が出来るためカビやすくなるのではないか、と不安に感じる方もいらっしゃいます。中には実際に気密性の高いマンションに住んでカビに悩まされているというお宅もあります。室温が快適でも、アレルギー物質となるカビが発生してしまうと、健康に影響を及ぼしかねないので、快適な家とは言えなくなってしまいます。
本当に気密性の高い家は快適なのでしょうか?カビが発生しやすいという問題はないのでしょうか?カビに悩まされない家にする秘訣とともにご紹介したいと思います。
1.気密性の高い家はカビる!?
そもそも気密性の高い家とはどんな基準で言われるのでしょうか?気密性の高い家とカビの関係をご説明したいと思います。
■気密性の高い家とは?
気密性の高い家(高気密住宅)は、家の中の気密性を高めるために制度の高い建材を使用し、防湿シートや気密テープで建物内の隙間を限りなく減らして建てられた家のことを指します。
建物の気密性は下記の計算式によるC値(相当隙間面積)で表されます。
C値 = {住宅船体の隙間の合計面積(㎠)}÷{延べ床面積(㎡)}
C値の値が少ないほど気密性が高く、大きいほど気密性が低いことを示します。現段階では、国の省エネ基準において気密性の測定は義務付けられていないため基準値はありませんが、高気密住宅と言われる家のC値は1.0以下で、非常に高い気密性住宅になると0.5以下と言われています。
気密性が高い家は、建物に隙間が少ないことから外気の影響を受けず、年間を通して室温が安定しやすいため、冷暖房の効きが良く、光熱費の削減にもつながります。また、防音・防塵効果もあります。
■気密性の高い家とカビやすい家の関係
カビは、『温度』が20~30℃で、『湿度』が70%以上、木材やほこり、皮脂などの『栄養』があり、生活空間で供給され続ける『酸素』の4つの条件が揃うと繁殖しやすくなります。
屋外と屋内の空気の循環が少なく気密性の高い家は、室内の気温が逃げにくく安定した快適な温度になる反面、水蒸気がとどまりやすく湿度が高くなります。しかも、常に安定した室温で快適な空間であるため、家に居る時間が長くなると人やペットによる皮脂やホコリがとどまり、酸素も増えます。構造上、気密性の高い家はカビが繁殖しやすい条件が整いやすくなるわけです。
壁や床など目に見える部分にカビが発生していない場合でも、壁紙の裏や床下、天井裏に結露が起こったり、断熱材に湿気が溜まったりして、カビ臭さを感じたり建材がいつの間にか腐食していたりするケースもあります。
また、最近はランドリールームを設けて室内干しが基本になっている家や、お風呂に入る時間が家族バラバラで常に湯船にお湯を張っているなど、水蒸気が発生しやすい間取りやライフスタイルになっています。そのうえ高気密によって水蒸気が排出されないと結露が生じカビが発生してしまいます。
気密性の高い家はカビが活性化しやすい条件が整いやすいため、十分な換気が行われていなければカビが発生する原因となってしまいます。
2.カビに悩まされない家にするには?
気密性の高い家ではなくてもカビに悩まされているというお宅もあります。気密性の高い家を含め、どんな対策を行えば良いのでしょうか?カビに悩まされない家にするための秘訣をご紹介したいと思います。
■空気の循環を意識する!
室内にカビが発生する主な原因は湿気が排出されない、室内の空気循環が悪いという点です。中には、『高気密の家ではないし、隙間風を感じるのにカビが生える』というお宅もありますが、カビが生えている部屋は空気の循環が出来ていなかったり、水気がなくならなかったりして湿気が溜まっていることがほとんどです。ですから、高気密の家でも、そうではなくても、十分な換気が行える家にすることがカビに悩まされない家にするうえで重要なポイントです。
新築やリノベーションを行う際には、24時間換気システムの導入などの換気計画をしっかり行いましょう。マンションや新築で24時間換気システムが付いているのにカビが生えたというお宅の中には、掃除の際にスイッチを切ったことを忘れて換気システムが作動していなかったことが原因というケースもあります。また、換気扇の掃除が行われておらずフィルターが詰まっていて空気が循環出来ていなかったというケースもあります。湿気が溜まっていると感じた場合は、換気システムが作動しているか、メンテナンスを行っているかを確認しましょう。
また、入浴後に浴室の湿気を排出した方が良いと思って浴室のドアを開ける方もいますが、実は逆効果です。脱衣所にまで湿気が溜まってしまい、壁紙や床にカビが生えてしまうお宅は少なくありません。入浴後はドアを閉めて浴室・脱衣所それぞれの換気扇をしっかり活用しましょう。
さらに、空気の循環が十分に行えていない家では、換気扇を設置したり、サーキュレーターを使用したり、風の流れを考えて窓を設置したりして空気が循環するようにしましょう。晴れた日は窓を開けて換気を行うことや、梅雨時期など湿度が高くなる時期は、除湿器やエアコンの除湿機能を利用することも効果的です。
■結露を防ぐ窓にする!
室内で特にカビの原因となるのは結露です。特に窓は外気の影響を受けやすいため結露が発生しやすい部分です。冬は特に、室内にある水蒸気を含む暖かい空気が、外気によって冷やされている窓ガラスに触れて水滴に変わり結露になってしまいます。ガラス部分は水滴が下に流れますが、木や壁紙などの建材には染み込んで湿気が溜まってします。そのため、出窓の枠部分や窓周りのクロスに特にカビが生えやすいというお宅は少なくありません。
カビの原因となる窓の結露を抑えるためには、窓自体を、外と室内との温度差が小さくなるようにすることが秘訣です。窓を断熱性や遮熱性の高い樹脂サッシや複層ガラスにリフォームすることで、結露の発生を防ぐことが出来ます。
また、カビの栄養となるホコリや水分が窓レールやパッキンに溜まらないように、定期的に掃除を行うことによってもカビを防ぐ効果があります。ホコリや湿気が溜まりにくいように窓の近くに家具を置かないようにすることも対策になります。
3. まとめ
気密性の高い高気密住宅は、建物に隙間が少ないため、年間を通して快適な室温を保ち、冷暖房の効きが良いため光熱費の削減にもつながるというメリットがあります。その一方で、空気が循環しないため十分な換気が行われていなければ湿気が溜まってカビが発生しやすくなります。カビを発生させないためには、室内の空気の循環を意識して、24時間換気システムを導入したり、換気扇やサーキュレーター、除湿器を活用したりしましょう。また、結露が起こりやすい窓を樹脂サッシにしたり複層ガラスにしたりすることも効果的です。換気扇や窓まわりの定期的なメンテナンスや掃除を行うこともカビを防ぐうえで効果的です。
十分な換気が行われていれば気密性の高い家はメリットの多い快適な家になります。換気計画を充分行って心地良い家にしましょう。

