モダンな外観の家の屋根として人気の、平らで勾配のない屋根のことを陸屋根(りくやね・ろくやね)と言います。ひと昔前までは、勾配のある瓦屋根が戸建ての主流でしたが、最近はシンプルでおしゃれな外観を演出できることから、陸屋根を採用する方が増えています。しかし、オシャレなだけで平らな屋根を選んでも問題ないのでしょうか?

注文住宅で屋根のカタチを考えている方や、陸屋根の中古物件を購入しようと考えている方に、平らな屋根のメリットとデメリット、また陸屋根の家を快適な住まいにするうえでのポイントを、住宅のプロがご説明したいと思います。

1.陸屋根のメリット&デメリット

人気の陸屋根ですが、メリットだけではなく、デメリットもあります。屋根選びで確認しておくべき、メリットとデメリットをご紹介したいと思います。

■陸屋根のメリットとは?

●モダンな外観になる:シャープでスッキリとした印象になるため、モダンテイストやシンプルな家を理想とする方はもちろん、ナチュラルスタイルや北欧テイスト、ジャパニーズモダンなど幅広いテイストに合わせやすいデザインになります。また、屋根と外壁の色の組み合わせやバランスを考えるのが難しいと感じる方にとって、外壁の色のみで良いので色選びがしやすいというメリットもあります。

●瓦の破損の心配がない:陸屋根は、瓦を使わないため、台風や強風で瓦が飛ばされたり地震の際に割れや落下したりする心配がないというメリットがあります。

●屋上バルコニーを作ることが出来る:住宅密集地など庭が作れなかったり、プライベート空間が少なかったりするお宅では、屋上を活用することが出来ます。アウトドアリビングとして活用したり、洗濯物を干したり、家庭菜園やガーデニングを楽しんだり、陸屋根にすることで建物を最大限に活用できます。太陽光パネルを設置することも出来ます。

■陸屋根のデメリットとは?

●雨風の影響を壁が受けやすい:勾配のある屋根は外壁よりも軒先が出ているため、雨風が直接壁に当たらない役割を果してくれます。しかし、屋根が出ておらず外壁とフラットな陸屋根の場合は、外壁が汚れやすくなったり、予想以上に窓に雨風が打ち付ける音が激しかったり、雨の日は少しも窓を開けられなかったりします。窓や玄関ドアには庇を付けるなどの工夫が必要です。

●雨漏りのリスクがある:屋根が平らなので、勾配のある屋根に比べて雨水が溜まりやすく雨漏りのリスクが高まってしまいます。しっかりと防水施工が行われていないと雨漏りが起きてしまうので、優良施工の会社を選ぶことや、定期的なメンテナンスを怠らないこと、排水溝の掃除を行うことなどが重要です。

●夏は室内が高温になりやすい:勾配のある屋根は屋根裏の空間が出来ますが、屋根が平らなため天井との距離が近く、夏は特に太陽の影響を受け、室内が高温になりやすいというデメリットがあります。

●屋上防水タイプは建築費用が高くなる:屋上バルコニーにする場合は、歩行できるように屋上をシート防水やウレタン防水で仕上げる必要があります。また、屋上までの階段が必要になるため、コストが割高になってしまいます。(バルコニータイプではない金属屋根の場合は、勾配のある木造住宅の一般的な屋根とコストはほぼ変わりません。)

2.平らな屋根の家で快適に暮らすには?

メリットだけではなく、デメリットもあることを理解したうえで、陸屋根を採用するのであれば、デメリットを軽減することを意識した家づくりが大切です。モダンでおしゃれな平らな屋根の家で快適に暮らすために、どんな点を意識した家にすると良いのか、ご説明したいと思います。

■ランニングコストを考えた防水工法選び

雨漏りのリスクを考えると、メンテナンスがしやすく耐久性の高い防水工法を選ぶことが重要です。防水工法には主に下記の3種類があり、工法によって耐用年数が異なります。

・塗膜防水:防水塗料を塗って防水塗膜を作る工法で、塗膜防水にはさらにウレタン防水とFRP防水があります。耐用年数は8~10年前後です。重ね塗りが出来るため他の工法と比較するとメンテナンスがしやすいものの、塗装による施工であるため、職人の腕によって仕上がりに差が出てしまうというデメリットがあります。

・シート防水:専用の防水シートを屋上床面に貼る工法で、耐用年数は10~20年です。シート防水には、塩化ビニールシート防水とゴムシート防水があります。工事費用が安いうえに耐久年数が長いというメリットがあります。ただし、劣化が進むと断裂が起きやすいというデメリットがあります。

・アスファルト防水:溶かしたアスファルトとアスファルトルーフィングシートを重ねて施工する工法です。耐用年数は15~20年で、耐久性が高いため、マンションや公共施設で採用されていますが、重さがあるため、木造住宅には不向きとされています。

陸屋根のメンテナンスは10年ごとと言われていますが、工法によって耐用年数は8~20年と、選ぶ工法によってメンテナンスの頻度を大きく変えることができます。しかし、耐用年数が長くても施工費用が高い場合もあります。立地環境や屋上としての使い方などによって劣化のスピードが違う場合もあります。メンテナンス費用とタイミングを、外壁塗装やリノベーションのタイミング、家族のお金がかかるタイミングなど、家にかかるお金やライフマネープランを比較しながら、どの工法を採用するか検討しましょう。

■断熱性を高くして暑さ対策

室内が高温になってしまうと夏は快適に過ごすことが出来ません。外気の影響を最小限に抑えるために、断熱性能の高い家づくりを意識しましょう。特に、太陽熱の影響を軽減するために、屋根の断熱性能を高くすることが大切です。防水層の上に断熱材を敷くことによって屋上の断熱性能を高めることが出来ます。また、塗膜防水工法であれば、トップコートに遮熱塗料を使うことによっても、暑さ対策が行えます。

さらに、屋上だけではなく、家全体の断熱性能が高まれば外気の影響を受けず、冷房も効きやすくなるので、壁や天井に断熱材をしっかりと入れることを意識しましょう。

3. まとめ

勾配の無い平らな屋根、陸屋根は、モダンでおしゃれな家の定番屋根となりつつあります。シンプルなデザインで幅広いテイストにマッチすること、瓦を使用しないため災害時に破損や落下の心配がないこと、住宅密集地や庭が無い家でも、アウトドアリビングや洗濯物を干す場所として活用できるというメリットがあります。その一方で、しっかりと防水施工を行い定期的なメンテナンスを行わなければ、雨漏りのリスクが高まってしまうことや、断熱性能を高めていなければ夏の太陽熱の影響を受けて室内が高温になってしまうというデメリットがあります。

デザイン性だけではなく、メンテナンス方法や頻度、費用も検討したうえで屋根の形状を選びましょう。

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