地震に強い家、台風に強い家を建てても、その家が建っている場所が災害の影響を受けやすければ意味がありません。自分ではどうすることも出来ない災害や天候だからこそ、家そのものだけではなく、立地環境に注意を払う必要があります。そのため、中古物件や建売住宅などの家探しや、注文住宅を建てるための土地探しをするうえで、災害リスクがあるかどうかを確認することは、安心で安全な暮らしを長くするうえで重要です。
家探しや土地探しを行ううえで、災害リスクを軽減するために、どんな点に注意したり、意識したりすると良いのか、家づくりのプロがお教えします。
1.家探し・土地探しではハザードマップをチェック
家探しや土地探しで、災害リスクを知るためにハザードマップを活用する方が増えています。ハザードマップとはどんなもので、どのように活用すると良いのかをご説明したいと思います。
■ハザードマップとは?
ハザードマップとは、自然災害で被災する可能性のある範囲や避難場所を示した、市町村単位で作られているマップ(地図)です。ハザードマップから分かる災害の種類は、浸水洪水・津波・土砂災害・高潮・地震・火山・道路防災情報・地形分類などで被害を受けやすい地域が分かります。
各市区町村の区役所や役場で、誰でも紙ベースのハザードマップを入手したり、インターネットで確認したりすることが出来ます。ネット上で確認できるマップの中には、災害ごとではなく、それぞれのハザードマップをまとめて重ねた状態で確認できるものもあり、災害リスクを確認するうえで役立ちます。
浸水洪水の場合は、1000年に1度の大雨が降った場合に被災する可能性がある地域を図示したものです。ハザードマップに記載されている地域を避けることができれば、災害に遭う確率は0.1%とされています。もちろん、自然相手なので想定外なことも予想されますが、住む場所をしっかりと選ぶことで被災するリスクを大幅に軽減することが出来るというわけです。
■ハザードマップで街全体をチェック
被災リスクの高い場所に家を建てないことはもちろんですが、ハザードマップで問題のないエリアに土地があっても、危険な地域を通らなければ家に帰れなかったり、反対に外出できなかったりする場合は、災害時に避難できず孤立してしまう可能性もありえます。そのため、家の位置だけではなく、通学路や通勤の道、最寄りの駅や病院の場所、避難場所とそこまでの経路などもハザードマップと照らし合わせながら、安全に行き来することが出来るかを確認しておくことは大切です。
家づくりを行う際にも、玄関や勝手口、駐車場の位置を決めるときなどに、有効な避難経路を確保するという点で、ハザードマップを確認することは役立ちます。洪水・高潮・津波の被災リスクが高い地域であれば1階は駐車場にして2階以上に居室を設けるなどの対策もとれます。
ハザードマップが示す災害リスクの全てを避けることは出来ないかもしれませんが、災害エリアに当てはまらない家や土地の候補がいくつかある場合は特に、日常的に通るであろう道など、街全体を確認することは比較材料として効果的です。
2.災害リスクを軽減するためには?
災害リスクを軽減するためには、家や土地探しの際にハザードマップを活用する以外にも出来ることがあります。どんなことに注意して、何が出来るのかをご紹介したいと思います。
■営業トークだけの『安全』を信じない!
治安が良く、安全で安心、という街は多くの人にとって魅力的なものになるので、不動産屋や住宅会社、リフォーム会社など家や土地を売りたい営業マンは、営業トークとして住みよい地域だということをアピールすることがあります。治安の良さなどは、街の雰囲気からも分かるかもしれませんが、天候や災害リスクに関しては、晴れた日に訪れると特に分かりにくい分野です。そのため、営業マンの中には、ハザードマップに基づいた災害リスクに触れることなく、「この地域は安全ですよ」と言う人もいるので注意が必要です。
どんな分野に対して安全だと言っているのか、より具体的に説明してもらいましょう。また、営業マンが言っているから、ではなく自分でハザードマップを確認するようにして、営業トークだけを信じないようにすることは重要です。
■チェックは細かく自分の目で!
自分でチェックできる項目は、ハザードマップだけではありません。候補に入れた家や土地があるのであれば、出来るだけ実際に現地に足を運んで、自分の目でチェックすることは役立ちます。
晴れた日だけではなく、雨天時や大雨の日、強風が吹いている日など、十分に注意をしたうえで、天候が違う日にあえて確認をして天候や季節の変化が、立地環境にどのように影響するかを確認してみましょう。
ハザードマップでは問題がない地域でも、隣の家の屋根の向きで雨水が敷地内に集まりやすかったり、周りの建物の並び方や、周辺の木によって風が抜けやすく、玄関の開け閉めが風に影響されて危険だったりする場合もあります。これはハザードマップでは分からない情報であるうえに、その地域全体ではなく、その土地や家の間取りだからこそ当てはまるケースも多くあります。
さらに、雨の日には水はけが悪く、水たまりができやすい土地であれば湿度や地盤の柔らかさに影響します。周囲に自然が多い地域や、街の景観を保つうえで樹木が植えられている区域などは、風の向きで周囲の木の枯れ葉が集まりやすく、掃除が大変になるということも想定されます。
台風や大雨当日は外出するのは危険なので無理はせず、行政の指示に従いましょう。当日確認することが出来なかった場合でも、台風後に不動産屋や地元の方に被害状況を確認することも出来ます。過去の災害状況を聞くことも役立ちます。
3. まとめ
どんなに丈夫で安全な家を建てても、土台となる土地が災害の影響を受けやすい場所であれば意味がありません。被災リスクを把握して、避けるために地方自治体が用意しているハザードマップを活用しましょう。ハザードマップと家の場所を照らし合わせることはもちろん、通勤・通学路や避難経路など生活範囲の被災リスクにも注意して家や土地探し、家づくりをすることは重要です。また、災害リスクを軽減するために、営業トークだけを信じずに、ハザードマップを確認したり、様々な天候の日に現地を確認したり、過去の被災状況を聞いたりして、自分の目で確認することが大切です。
災害リスクを軽減できるかどうかは、家・土地探しの時点から始まっていると思って意識しておきましょう!