住宅の結露を防いだり、臭いを排出したり、空気を入れ替えたりするうえで、換気設備は重要な役割を果たしています。ひと昔前までは、窓を開けて換気する方法が一般的でしたが、今の新築では24時間換気システムを設置するのが一般的となりました。しかし換気中の音がうるさいなどのデメリットを聞いたり、24時間も付けっ放しにしていると電気代が高くなるのではないかと心配になったりして、通気が良い家にしておけば必要ないのではないか、設置義務がないのであれば設置しなくても良いのではないか、と考えている方もいらっしゃいます。

そこで今回は、24時間換気システムに関して、戸建てには設置義務があるのか、新築の場合だけではなくリノベーションではどうなのか、音や費用の面に関してもご説明したいと思います。

1.24時間換気システムって本当に必要?

24時間換気システムのデメリットを耳にすると、必要なのか、設置義務はあるのか、と考えてしまうかもしれません。そもそも24時間換気システムとは、どのようなシステムなのでしょうか?設置義務があるのかという点に関しても、ご説明したいと思います。

■24時間換気システムって何?

24時間換気システムとは、窓やドアを開閉することなく、室内の空気を換気することが出来るシステムのことです。トイレやキッチンなど臭いが気になるときだけにスイッチをオンオフして使用できる局所換気扇とは異なり、24時間常時換気する設備です。

換気システムは下記の4つの種類に分類されます。

第1種:強制給排気型(熱交換型)・・・給排気の両方を機械でコントロールするため、安定的な換気が行えます。また、別名熱交換型と呼ばれているように、排気する際に、室内で発生した熱を給気した空気に移動させることが出来るため、換気中も室内温度を一定に保てるというメリットがあります。

第2種:強制給気型(自然排気型)・・・機械で給気して、排気は自然に行う方法です。室内の気圧を活用して排気するので、室内にホコリなどが入りにくいというメリットがあります。しかし、結露しやすいというデメリットがあることから、住宅への設置は一般的ではありません。

第3種:強制排気型(自然吸気型)・・・自然に給気して機械で排気する方法です。消費電力が少ないというメリットがあります。自然な給気なので、給気速度は遅く、急激な室内の温度変化はないものの、給気口の形状や位置によって、外気の温度の影響を受けやすくなります。

第4種:自然給排気型(パッシブ換気型):給気も排気も空気の温度差で生じた圧力を活用して自然に換気する方法です。機械を使わないため電気代がかからず、メンテナンスがかからないというメリットがあります。

24時間換気システムを設置することで、室内に蓄積される化学物質を排出してシックハウス症候群の発症を防ぐことや、湿気や結露対策が行えるので住まいを長持ちさせることが出来ます。中には、窓の配置などを考えて通気性の良い家にすれば換気が出来るので問題ないのではないかと思う方もいますが、24時間換気システムはフィルターがついているため、取り入れる空気の清潔さが異なり、フィルターを通してホコリや排気ガス、花粉などをブロックして取り込みながら換気が行えるというメリットがあります。

■リノベーションでも設置義務があるの?

2003年にシックハウス対策として改正基準法が施行され、24時間換気システムの設置が原則として義務付けられました。そのため、2003年以降に新築した住宅ではマンションでも戸建てでも設置されています。

そのため、注文住宅で建てる場合は、設計段階で換気の種類や位置を決める必要があります。しかし、第4種換気に関しては選択することが出来ません。なぜなら、家の容積に対して1時間あたり0.5回の(部屋の空気の半分が入れ替わる)換気をしてホルムアルデヒド濃度を基準値以下に下げることが、建築基準法で定められているため、第4種換気では安定した換気が行えず、濃度計算ができないので自然給排気型は義務化された換気システムとして選ぶことが出来ません。

これは、新築だけではなく今後居室をリフォームやリノベーションする場合でも、完了検査が入る工事の場合は当てはまります。以前は、小規模な工事には完了検査がありませんでしたが、2025年4月より建築基準法が改正され、木造2階建てや延床面積200㎡以下の平屋のリノベーションの場合も、建築確認申請や工事完了検査が必要となったため、リノベーションを行う多くの住宅が24時間換気システムの設置対象となります。

2.24時間換気システムの問題は軽減できる!?

設置が義務化されている設備だとしても、設置することによるデメリットがあるのは事実です。しかし、デメリットや問題を意識した設置をすることで、問題が軽減されることもあります。24時間換気システムのよくある問題をどのように軽減できるか、ご説明したいと思います。

■換気中の音問題を軽減するためには?

機械を使って換気をしているため、少なからず音は発生してしまいますが、うるさいと感じるほどの大きな音が聞こえる場合は、換気システムに問題が生じていることが少なくありません。

例えば、給気口がしっかりと開いていなければ空気の入り口が狭く、大きな音の原因になってしまいます。寒さ対策として給気口を閉めてしまっているケースもありますが、音問題を防ぐためには給気口がちゃんと開いているか、適切な量の空気が入る状態になっているかを確認し、正しく設置、活用しましょう。寒さを防ぐのであれば、カバー付きの給排気グリルを検討することが出来ます。

また、フィルターや給気口、ダクト内にホコリが溜まってしまうと、風の通りが悪くなりモーターに負担がかかるため、音が大きくなってしまいます。腐食によるサビが原因で稼働音が激しくなる場合もあります。ホコリの蓄積やサビなどの腐食を防いで音問題を軽減するためには、定期的な掃除を行うことを心がけましょう。

さらに、定期的なメンテナンスを忘れずに受けて、部品の劣化や故障が発生していないかを確認することで、腐食や故障によって生じる音を未然に防ぐことも大切です。

中には音が気にならない場所、インテリアの邪魔にならない目立たない場所に設置すれば良いのではないかと考える方もいらっしゃいますが、換気が必要なのは、生活空間です。また、家具や棚で隠れるような目立たない場所に設置してしまうと、本来の換気機能が低減してしまうことさえあります。掃除やメンテナンスによって音トラブルを軽減できることを考えるなら、むしろ、掃除やメンテナンスがしやすく、給排気口を防ぐことがない場所に設置することが重要です。

■電気代を抑えるには?

設置はもちろんのこと使用も義務化されている24時間換気システムなので、電気代がかかることが気になる方は少なくありません。その場合は、導入する換気システムの種類を検討しましょう。

機械を用いるため、給排気の両方に機械を使う第1種が最も電気代がかかり、月200~800円程です。また、第1種換気は、メンテナンスコストもかかります。そのため、24時間換気システムに関係する電気代を含むコストを抑えたいのであれば、第2種換気や第3種換気の設置がおすすめです。しかし、種類によって換気性能が異なるので、電気代を抑えることばかりに注目すると、安定した換気ができなかったり、ホコリや汚れなどが防ぎにくくなったり、理想の換気が出来ない場合があるので注意が必要です。メリットだけではなく、それぞれのデメリットも確認しておきましょう。

3. まとめ

2003年以降、空気の入れ替えや通風して結露を防ぐための一時的な換気だけではなく、シックハウス対策として24時間換気システムの設置が義務化されました。新築の戸建てやマンションはもちろんのこと、工事完了検査が必要となるリノベーションやリフォームの場合も設置義務の対象となります。24時間換気システムは、音がうるさいという声もありますが、適切に設置して、定期的なメンテナンスや掃除を行うことで、腐食や劣化を防ぎ、問題となるほどの音も防ぐことが可能です。注文住宅やリノベーションで換気システムの種類を選ぶときには、第1~3種換気の中から、電気代やメンテナンスコスト、換気の方法や効率などをよく検討して選ぶようにしましょう。 新築でも大規模リノベーションでも義務化された24時間換気システムを設置することで、シックハウス対策を行い、快適に暮らせ

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