ここ数年、シンプルでモダンな外観の家が注文住宅やリノベーションでも人気となっています。出来るだけスッキリとした見た目になるように、装飾をほどこさなかったり、窓を減らしたり、屋根もフラットな陸屋根にしたりして、スタイリッシュな外観に仕上げています。そのように、外観のスッキリさにこだわる方の中には、雨樋や庇も無くしてスッキリさせたいという方は少なくありません。しかし、多くの家で当たり前のように採用されている雨樋や庇を無くしても問題ないのでしょうか?
ここでは、雨樋や庇の役割や、無くすことによるデメリット、雨樋や庇があってもモダンな外観に見せる方法をご紹介したいと思います。
1.雨樋や庇には大きな役割がある!
そもそも雨樋と庇は家のどの部分に必要で、どんな役割があるのでしょうか?雨樋や庇を無くすことで、家にどんな影響があるのか、ご説明したいと思います。
■雨樋とは?庇とは?
雨樋とは、屋根で受けた雨水を集めて地上へ流す部材のことです。雨樋の代表的な部分は、屋根の軒先に水平方向に設置して、屋根から流れてくる雨水を一番に受け止めて流す『軒樋』と、外壁に設置して軒樋で受けた雨水を地上に流す『竪樋』(縦樋)です。一般的な雨樋の素材は、硬質塩化ビニールで、定期的に交換や塗装が必要です。
庇とは、屋根とは別に、玄関ドアや窓などの開口部上部に取り付ける独立した小さな屋根のことです。開口部のサイズに合わせた庇もあれば、窓の幅よりも大きくバルコニーやウッドデッキに合わせた幅も奥行きも大きな庇もあります。窓の上部に庇を設けることで、雨や強い日差しが入るのを遮ってくれます。
■雨樋と庇を無くすと外壁への影響大!
雨樋を無くすと、屋根に集まった雨水が一気に落ちてきます。雨水は屋根の形状に合わせて一か所に集められて流れ落ちてくるので、滝のように水が降ってくる場所もあります。屋根の位置が高ければ高いほど勢いを増し、その下を通行する人にとって危険ですし、同じ位置に降り注ぐ大量の水によって、数年で地面のコンクリートにヒビが入り、掘れてくるということさえあります。
また、樋がなく、雨水が壁を伝って流れることになると、常に同じ部分が濡れることになり劣化や腐食が早まることもあります。実は雨漏りは屋根だけではなく外壁からの発生も少なくありません。常に湿気に晒されて外壁が傷みやすい状態にあると、雨漏りのリスクが高まってしまいます。
庇の場合も、雨風から外壁や家を守ってくれているので、窓やドアの上部に庇が無いと直接雨の影響を受け、雨漏りのリスクを高めることになります。窓に溜まった砂ぼこりが雨の際に一緒に流れ出て、サッシの下に黒いラインがつき、外壁の汚れが目立っているお宅も多くあります。また、庇を付けなかったために、直射日光が室内に入り暑くなりすぎたり、カーテンやフローリング、家具がすぐに色あせたりする、出かける際に玄関ドアを開けると室内まで雨風が入りこんでしまい大変、また雨が窓に当たる音が意外とうるさい、という後悔の声もよく聞きます。
2.雨樋や庇があってもモダンな外壁には出来る!?
雨樋や庇には大きな役割があるので、必要です。しかし、外観をオシャレに仕上げることにもこだわりたいものです。雨樋や庇があっても、どのようにモダンでオシャレな家に仕上げることが出来るのか、外観づくりのヒントをご紹介したいと思います。
■雨樋や庇の位置を考える
雨樋の中でも目立ちやすい竪樋は、設置位置を意識することで、目立ちやすさを緩和することが可能です。例えば、道路から見える場所や玄関がある外壁面には設置せずに、隣家側の壁に設置することが出来るかもしれません。
また軒や樋の設置数を最低限にしたいのであれば、雨風の影響を受けやすい外壁面や、雨染みやコケなどの汚れが発生した時にメンテナンスがし辛い隣家と隣接している部分などに優先的に設置することも出来ます。
さらに別の方法として、そもそも庇を無くせる外観になるような間取りやデザインにすることも出来ます。例えば、2階部分の屋根の軒(外壁面より外側に出ている屋根部分)を長めに出ししたり、2階の床を1階よりも広い間取りにしたり、2階のベランダを活用したりして1階部分の天井になるようにすれば、庇を設置せずとも、窓や壁に雨水が当たりにくいようにすることが出来ますし、外観のモダンな雰囲気を保つことも出来るかもしれません。軒を長めにとるのであれば、軒天(軒の裏)部分を活用し、デザイン性を意識して木目にすることで、さらにオシャレな外観にすることも可能です。
■オシャレな雨樋や庇を採用する
軒や雨樋自体をモダンな雰囲気に合うオシャレなデザインのものを採用するという方法もあります。
例えば、白や黒、茶色が一般的な雨樋ですが、モダンな外観に合うメタリック調やアイアン、艶が無いマット仕上げの雨樋もあります。窓枠にシルバー色が使われているのであれば、雨樋もメタリック調を選ぶことで統一感が出ますし、外壁が黒や濃いグレーなどのダーク色であればアイアンの竪樋を選ぶことにより、よりモダンな雰囲気を演出することが可能です。
また、軒樋には継ぎ目が目立ちにくく、吊り具が見えない内吊り方式が採用された製品を選べば、雨樋が目立ちません。軒先をスッキリさせるために、水平ライン仕上げのタイプを選ぶことも出来ます。
さらに、庇に関しても外観のテイストに合わせて、アルミニウム素材でスタイリッシュなデザインのものやポリカーボネート素材で透明なので採光が出来るうえに外壁の色を遮ることがないものなど、デザインを意識して選ぶことで、オシャレな外観をつくるアイテムとして貢献します。
3. まとめ
モダンでオシャレな外観を目指す方は、出来るだけ装飾のないスッキリとしたデザインに仕上げるために、雨樋や庇も無くしたいと思うかもしれません。しかし、屋根に受ける雨水を地上に流す役割がある雨樋や、直射日光や雨を遮る庇は、無くしてしまうと外壁への影響が大きく、外壁の汚れが付きやすくなったり、雨漏りのリスクが上がったりします。また、庇が無いことで、直射日光による内装材やファブリックの色あせが早まることもあります。雨樋と庇は無くすのではなく、目立たない位置に設置したり、デザイン性の高い形状を選んだり、色を外壁に合わせて選んだりすることで、モダンでオシャレな外観を保つようにしましょう。
好みのテイストに合ったオシャレな外観にするために、雨樋や庇にもこだわって選びましょう!