家族で快適に暮らすために、また高齢化が進む中で、いくつになってもマイホームに住めるように、介護リフォームを考える方は増えています。介護リフォームをしたい、いつかは必要だろうから考えておきたい、と思いつつも、なかなかそのタイミングが分からないという方は少なくありません。介護リフォームのベストタイミングはいつなのでしょうか?

1. ベストタイミングを間違えないためには?

大抵の方は介護のプロでも、リフォームのプロでもないので、介護リフォームのベストタイミングを図るのは難しいと感じるかもしれません。偏にリフォームと言っても、その目的が違えばベストなタイミングも違ってきます。介護リフォームのベストタイミングを間違えないためには、どんな点に注意すれば良いのでしょうか?

■病状や老化のタイミングは人それぞれ!

介護リフォームは、古い物を新しくしたり、壊れたものを直したりする目的のリフォームではないので、設備機器の耐用年数のように、何年を目安にリフォームをすれば良いという基準はありません。基本的には、要介護者にとって必要な時に手摺やスロープをつけたり、危険性を感じた時に段差や壁を撤去したりするのがベストなタイミングになります。何歳になったからリフォームが必要というわけではなく、生活する人の健康状態によってタイミングが変わってくるのです。しかもそこで生活する人に関わる事なので、近所の人が介護リフォームをしたから、同じ病状の人がリフォームをしたから、という理由でベストタイミングだと思って、我が家もしようと考えるのは注意が必要です。どんな事をしたのか、知識や情報として取り入れて参考にするだけに留めておきましょう。

■介護に備えるリフォームには注意が必要!

今のところ家族は全員元気だけど、将来介護が必要な時に備えてバリアフリーにしておこうと考える方は少なくありません。特に家が古くなり、全面改装をする際や、トイレや浴室などの水回りリフォームをする際には、このタイミングで出来る事は何かないかと考えるかもしれません。いつか必要となるリフォームに前もって備える事は良いことですが、元気なうちは最低限にしておきましょう。ドアを引戸にすることや大きな段差を無くすことは、要介護者に限らず誰にとっても使い勝手を良くするものなので、問題ありませんが、必要のない所に手摺を沢山付けてしまって、通りづらくなってしまったり、体をぶつけて怪我しやくなってしまったりするというケースもあります。あまりにもバリアフリーに特化しすぎて、脚の筋力が低下しすぎてしまったという方もおられます。さらに、いざ介護が必要になった時には、手摺が邪魔で介護できない、トイレや浴室が広すぎて捕まる場所がない、などの問題が発生することさえあります。前もって介護に備えたリフォームをしたせいで、介護を早めてしまうというのは本末転倒です。何も分からないうちから心配しすぎてリフォームしてしまわないようにしましょう。

介護者がいない時期のリフォームは、介護を意識しすぎたバリアフリーリフォームではなく、年齢や健康状態に関係なく家族の誰にでも使いやすいユニバーサルデザインを目指してリフォームしましょう。また、大規模リフォームを行う機会があるのであれば、将来手摺を付けそうな所の壁を補強しておくことや、介護が必要となる人の部屋を水回りやリビングに近い部分にしておくこと、掃除のしやすい床材を選んでおくなどは、介護リフォームに備えて出来るリフォームです。

 

2.ベストタイミングを逃さないためには?

ここまで、ベストタイミングを間違えないための注意点をお伝えしましたが、では実際に介護リフォームのベストタイミングを逃さないようにするにはどうすれば良いのでしょうか?

■要介護者の残存能力を見極める

ベストタイミングを見極めるカギとなるのが、要介護者の残存能力です。残存能力とは、今出来る動き、身体の可動域などが含まれます。手摺があれば歩行には問題ない場合や、介護なしでトイレが出来る場合などは、車椅子を想定した大掛かりなリフォームをするタイミングとはいえません。今ある残存能力を活かして、手摺を取り付けるリフォームだけで充分かもしれません。杖などの福祉用具を使って自立した生活が送れている人の中には、わざわざリフォームして手摺をつけなくても、今の慣れている杖の動作の方が楽だという場合もあります。むしろ、無理にリフォームをしたせいで、動きにくくなり歩くのが億劫になる場合もあります。残存能力を奪ってしまうようなリフォームをしないようにしましょう。残存能力があるうちは、それを最大限に活かし、必要最低限のリフォームに留めることが必要です。しかし、進行性の病気や老化の場合は、柔軟に介護リフォームが必要となるかもしれません。早すぎるリフォーム、逆に遅すぎるリフォームにならないように、担当の医師やケアマネジャーに残存能力など体調や進行度を確認しながら前もってリフォーム計画を立てることが役に立ちます。

■本人や家族だから分かることもある!

中には、ケアマネジャーやリフォーム会社の人に勧められたから、この時期がベストで、このリフォームが必要だ!と思いこんでしまう方もおられます。逆に、今はリフォームの必要が無いと言われることもあります。確かにプロの意見は必要ですし、参考になります。しかし、その家で生活するのは要介護者ですし、一番近くで介護するのは家族ではないでしょうか?リフォームのためのお金を払うのも、専門家ではありません。今まで近くで見てきた家族だからこそ分かる、要介護者の動きや体調、癖などがあります。ケアマネジャーやリフォーム会社の方が要介護者の方の状態を見に来た時に体調が良く動けているために、今はリフォームの必要はないと言われるかもしれません。また認知症の方の中には、受け答えがハッキリしていて病状が傍目からは分かりにくい場合もあります。それでも、一緒に生活している家族は現状を理解していて、リフォームの必要性を実感しているかもしれません。また介護者にとって動きやすい導線や生活スタイルは、その家に住む本人にしか分かりません。介護リフォームは専門家に言われた通りにしなければならないと思わずに、意見を交換し、しっかりとコミュニケーションをとることで、必要なタイミングで必要なリフォームを行うことが出来ます。

3. まとめ

介護リフォームは、要介護者や介護者など、その家に住む人によってそれぞれベストタイミングが異なります。将来を見込んで介護に備えるリフォームも出来ますが、先の症状などは分からないので必要最低限にしましょう。家のためのリフォームにタイミングを合わせるのではなく、要介護者の残存能力を確認しながら介護のためのリフォームのタイミングを見極めることが重要です。そのためには、医師やケアマネジャーなどとの連携し、専門家の意見を聞きつつベストタイミングを逃さないようにしましょう。

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